JIS X 8341-3改正で何が変わる?Web担当者が今知っておきたいポイント

「ウェブアクセシビリティの対応が大切」と聞く機会は増えたものの、
「そもそもウェブアクセシビリティとは何のこと?」
「自社サイトでは何から始めればよいの?」
「JIS X 8341-3の改正で、今までの対応は変わるの?」
と感じているweb担当者の方も多いのではないでしょうか。
特に企業サイト・医療機関サイト・教育機関サイト・自治体サイトでは、年齢や障がいの有無、利用している端末や環境にかかわらず、誰もが必要な情報にたどり着けることが重要です。お問い合わせ、採用情報、診療案内、行政手続きなど、webサイト上の情報が利用者の行動に直結する場面も少なくありません。
そのような中で、ウェブアクセシビリティの日本産業規格である JIS X 8341-3 の改正に向けた動きが進んでいます。今回の改正では、スマートフォンでの操作、画面拡大時の見やすさ、フォーム入力やログインのしやすさなど、日々のweb運用にも関わる項目がより重視されています。
この記事では、WAIC(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)が公開しているセミナー資料をもとに、JIS X 8341-3の改正概要をweb担当者向けに分かりやすく解説します。
「専門用語が多くて難しそう」と感じている方でも、この記事を読むことで、以下のポイントを整理できます。
- JIS X 8341-3とは何か
- なぜ今、ウェブアクセシビリティ対応が重要なのか
- 改正でどのような点が強化されるのか
- 自社サイトでまず確認すべきポイントは何か
まずは、JIS X 8341-3とウェブアクセシビリティの基本から見ていきましょう。
(この記事は2026年6月24日に執筆しました)
INDEX
JIS X 8341-3とは?
JIS X 8341-3では、高齢者や障がいのある方を含め、誰もがwebサイトを利用しやすくするための日本のウェブアクセシビリティ規格です。
webサイトの設計・制作・運用における「配慮すべき基準」がまとめられており、特に公共機関や医療機関では重要な指標となっています。
例えば、以下のような配慮が求められます。
- 画像に代替テキスト(alt)を設定し、音声読み上げに対応する
- 色の違いだけに頼らず、文字や記号でも情報を伝える
- マウスだけではなく、キーボードでも操作できる設計にする
- 文字サイズを拡大しても情報が取得できるようにする
- 動画に字幕を付けることで、音声が聞き取りにくい方にも情報を届ける
ウェブアクセシビリティというと、障がいのある方だけの特別な対応と思われることがありますが、実際にはそうではありません。小さな画面で閲覧している人、けがで一時的にマウス操作が難しい人、屋外で画面が見えづらい人など、さまざまな利用状況に関わる考え方です。
現在広く参照されている JIS X 8341-3:2016 は、国際規格である ISO/IEC 40500:2012 および WCAG 2.0 と同一の内容になっています。
今回の改正はWCAG 2.2対応が大きなポイント
今回の改正で大きなポイントとなるのが、WCAG 2.1/2.2で追加された達成基準への対応です。
WCAGとは「Web Content Accessibility Guidelines」の略で、webコンテンツをアクセシブルにするための国際的なガイドラインです。JIS X 8341-3は、このWCAGと深く関係しています。
WAICのセミナー資料では、JIS X 8341-3の改正に向けて、2025年10月に改正原案作成委員会が発足し、2026年5月頃の完成を目標に原案作成中であることが紹介されています。
また、原則として ISO/IEC 40500 との一致規格になる見込みとされています。
改正後は、現在の達成基準に加えて新しい達成基準が追加される予定です。
ただし、web担当者としては「正式な改正を待ってから考えればよい」というよりも、今のうちから新しい達成基準の考え方を知り、対応できる部分を少しずつ確認しておくことが大切です。
まずは JIS X 8341-3:2016への対応を基礎としながら、WCAG 2.1/2.2で追加されたレベルA・AAの達成基準を先取りして確認していく ことが現実的です。
改正で特に強化される3つの視点
WAICの資料では、改正JISで主に強化される内容として、以下の3点が挙げられています。
- モバイル機器
- ロービジョン
- 認知・学習障がい
それぞれ、webサイトの制作時だけでなく、日々の更新や運用にも関わる内容です。
1. モバイル機器への対応
スマートフォンやタブレットでwebサイトを見ることは、今では当たり前になりました。
そのため、モバイル機器での閲覧や操作を前提にしたウェブアクセシビリティ対応が、より重要になっています。
画面の向きを制限しない
スマートフォンやタブレットでは、縦向き・横向きのどちらでも閲覧できることが望まれます。
たとえば、車いすにスマートフォンを固定して利用している方の場合、端末の向きを簡単に変えられないことがあります。
もしwebサイト側で特定の向きに表示を制限していると、利用者によっては操作しづらくなってしまいます。
通常のwebサイトでは大きな問題になりにくい項目ですが、特別な表示制御を行っている場合は注意が必要です。
複雑なタッチ操作だけに依存しない
地図や画像ビューアーなどでは、2本指で拡大・縮小する「ピンチイン」「ピンチアウト」が使われることがあります。
しかし、すべての利用者が複数の指を使った操作をできるわけではありません。
そのため、プラスボタン・マイナスボタンなど、1本指でも操作できる方法を用意することが大切です。
外部サービスを埋め込む場合も、そのサービスがウェブアクセシビリティ要件を満たしているか、事前に確認しておくと安心です。
2. ロービジョン(弱視)への対応
ロービジョンとは、眼鏡やコンタクトレンズを使っても見えにくい状態を指します。
今回の改正では、画面を拡大して閲覧する方や、色の見分けが難しい方への配慮も強化されています。
画面を拡大しても読みやすいか
webサイトを拡大表示したときに、内容が画面幅に合わせて折り返されることを「リフロー」といいます。
リフローに対応していない場合、縦方向だけでなく横方向にもスクロールしないと文章が読めなくなり、利用者にとって大きな負担になります。
スマートフォン表示だけでなく、PCブラウザで拡大したときの見え方も確認しておきましょう。
テキスト以外のコントラストも確認する
これまで、文字と背景のコントラストは意識していたというweb担当者の方も多いかもしれません。
一方で、グラフの色、アイコン、ボタンの枠線、入力欄の境界線など、テキスト以外の要素の見やすさは見落とされがちです。
たとえば、円グラフや棒グラフを色だけで区別している場合、色の違いが分かりづらい利用者には内容が伝わらない可能性があります。
色だけでなく、ラベルやパターン、十分なコントラストを組み合わせて情報を伝えることが重要です。
3. 認知・学習障がいへの対応
お問い合わせフォームやログインフォームも、今回の改正で意識したいポイントです。
フォームの自動入力に対応する
お問い合わせフォームでは、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどを入力する場面があります。
このとき、HTML上で入力欄の目的が適切に示されていると、ブラウザの自動入力機能を利用しやすくなります。
自動入力に対応することで、利用者は同じ情報を何度も入力したり、記憶したりする負担を減らすことができます。
医療機関の予約フォーム、資料請求フォーム、採用エントリーフォームなどを設置しているサイトでは、特に確認しておきたい項目です。
ログイン時の負担を増やさない
会員ページやマイページ、予約システムなどでログイン機能を提供している場合は、パスワードマネージャーの利用を妨げていないか確認しましょう。
また、パスワード欄へのコピー&ペーストを禁止していると、利用者によっては入力が難しくなります。
セキュリティ対策のつもりで行っている設定が、かえって使いづらさにつながっていないか見直すことが大切です。
その他にも確認したいポイント
WAICの資料では、ほかにもwebサイト運用に関係する項目が紹介されています。
問い合わせ先の表示位置をそろえる
電話番号、メールアドレスなどの問い合わせ先を掲載する場合、ページごとに表示場所がバラバラだと、利用者が探しにくくなります。
あるページではヘッダー、別のページではフッターというように位置が変わるのではなく、できるだけ一貫した場所に表示することが大切です。
特に自治体サイトや医療機関サイトでは、困っている方が問い合わせ先を探している場面も多いため、分かりやすい導線設計が求められます。
ボタンやリンクの押しやすさを確認する
スマートフォンで小さなボタンやリンクを押そうとして、隣のリンクをタップしてしまった経験はありませんか?
ボタンやリンクなどのクリック・タップ対象は、十分な大きさを確保するか、隣り合う要素との間隔を十分に空けることが重要です。
これは障がいのある方だけでなく、スマートフォンを片手で操作している方や、高齢の方にとっても使いやすさにつながります。
web担当者が今から確認したい項目
改正内容を待ってから対応するのではなく、これまでにお伝えした視点、ポイントを踏まえ、今のうちに以下のような項目を確認しておくと安心です。
- スマートフォンで画面の向きを変えても問題なく閲覧できるか
- 地図やスライダーなどの操作が複雑なジェスチャーだけに依存していないか
- 画面を拡大しても内容が読みやすく折り返されるか
- グラフやアイコン、ボタンの境界が十分に見分けられるか
- フォームの自動入力に対応できているか
- ログイン画面でパスワードマネージャーやコピー&ペーストを妨げていないか
- 問い合わせ先がページごとにバラバラの場所に表示されていないか
- ボタンやリンクのクリック領域が小さすぎないか
すべてを一度に完璧に対応しようとすると、ハードルが高く感じられるかもしれません。
まずは、ユーザーがよく閲覧しているページや重要なお知らせページなど、利用者の行動に直結するページから確認していくのがおすすめです。
ウェブアクセシビリティ対応は継続的な取り組み
ウェブアクセシビリティ対応は、サイト公開時やリニューアル時に一度だけ行えば終わり、というものではありません。
WAICの資料でも、ウェブアクセシビリティに関する取り組みは継続的に実施することが重要であるとされています。
CMSでページを更新したり、PDFを掲載したり、画像や表を追加したりするたびに、ウェブアクセシビリティ品質は変化します。
そのため、運用ルールを整えておくことも大切です。日々の更新作業の中で少しずつ意識することで、サイト全体の品質向上につながります。
まとめ
JIS X 8341-3の改正は、専門的な規格の話に見えるかもしれません。
しかし実際には、「スマートフォンで操作しやすい」「フォーム入力で迷わない」「拡大しても読みやすい」など、多くの利用者にとって使いやすいwebサイトづくりにつながる内容です。
企業サイト、医療機関サイト、自治体サイトでは、情報を必要としている人が確実にたどり着けることがとても重要です。
ウェブアクセシビリティ対応は、法令や規格への対応だけでなく、利用者に誠実なサイト運営を行っていることを示す取り組みでもあります。
まずは現在のwebサイトで、フォーム・スマートフォン表示・ボタン・グラフ・問い合わせ導線などを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
ウェブアクセシビリティは、難しい専門対応というよりも、利用者にとって「見やすい」「使いやすい」「迷わない」webサイトを目指すための大切な考え方です。
今回のJIS X 8341-3改正をきっかけに、自社サイトのウェブアクセシビリティを見直してみましょう。
参考資料
WAIC「2026年冬 公的機関向けウェブアクセシビリティオンラインセミナー」
この記事を書いた人

- これまでご依頼をいただいたお客様にインタビューを行い、記事を作成していきます。
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